ヨーロッパアルプス・トレッキング取材   

      取材記・・、  世界中を揺るがした、ロンドン・テロのニュースをツェルマットからの帰途、スイスのチュウリッヒのホテル、CNNニュースで知った。10日間の山歩き旅の終わり、これからアムステルダム→ソウル経由で帰国するという時。空港で「号外」をゲット。 空港での厳しいセキュリティは予想通りでした。  夏、ヨーロッパアルプス、フランス・スイスの山々は世界の各地から観光客を呼び寄せる。高度3千mから4千mまで張りめぐるロープウエー、ゴンドラの眼下に、今にも「アルプスの少女ハイジ」が飛び出してきそうな小さな家々、メルヘンチックな村々は現実を忘れさせる癒しそのものなのだ。家の周りに花の植え込み以外、生活観がない。つまり、洗濯物や布団の類は一切干されていない。その手の設備はすべて家の中に用意され、電線はじめケーブルは地下に埋設してある。  スイスの山岳観光事業は百年以上前から始まり、登山鉄道やロープウエー・ゴンドラなどの交通機関が、国土を網羅するように整備されている。垂直に浮上するヘリコプターや軽飛行機の技術も高いと聞く。 日本の立山・黒部アルペンルート建設で難所の一つだった大観峰-黒部平間は当初、自動車道路を計画していた。急峻な斜面に道路を造るのは技術的に難しく、計画の見直しを迫られる中、スイスの技術を参考にロープウエーの建設が決まった経緯がある。  この地方の山岳交通網は実に機能的で美しく周りのロケーションに映える。山の頂上付近ではまるで自分が断崖をよじ登っているかのような錯覚に見舞われた。スイスが世界に輸出できる技術なのだ。  この季節、山好きな人、花好きな人が蜜に誘われるように世界中から集まる。モンブランのエギュ・デユ・ミディ展望台に登るケーブルに乗るのに数時間待ちも珍しくない。高齢者でも難なく秀峰の頂に運んでしまうからであろう。シニアが圧倒的に多い。  この展望台で下から吹き上がる風に私の帽子がふわっと宙に舞い、優雅に泳いで崖の下に消えた。うっかり帽子止めを忘れていたのだ。紫外線がきつい。スカーフを目深にかぶって代用に・・。シャモニーに降りて「モンブランハット」を買った。大いに気に入っている。 4千m級になると当然、気圧がひくく、気温が下がる。ゆっくり歩き、防寒と強い紫外線に気を遣う。私たちは頂上から2600メートルぐらいまでロープウエーで降り、そこから幾千種もの高根に咲き誇る花々に魅せられ、写しながら山小屋まで5時間ほど山歩きした。今回は天候に恵まれ目的の秀峰は全部顔を見せてくれた。モンブランで・・ユングフラウで、アイガーで、マッターホルンで・・・遠くモンテローザ(4634㍍)の雄姿もまぶしかった。 クライネシャイデックの駅の傍にマウンテンロッジがある。アイガーの眺望は格別、夜は10時近くもまだ明るい。花のカーペットの中で、刻々と秀峰を変えてゆく朝焼け、夕焼けを飽かず堪能した。  駅の裏手の丘にひっそりと「新田次郎氏のモニュメント(記念碑)」があった。元富士山気象庁の職員で山の小説を多く残した新田氏にふさわしく、山を見上げるような角度で「アルプスを愛した日本の作家新田次郎ここに眠る」と小さく書いてあった。 麓の村にバイクを始めガソリン車を乗り入れさせていない(工事車は別)。エコカー(電気自動車)のみ、若者もギア付きの自転車が主な移動手段だ。アルプスの花を守ってきたことと環境保護を含めて「山岳自然遺産」に登録される日も近いと聞く。日本のアルプスも学ぶべきことが多いと見た。                                        アルプスの花たち  アルプスの牧草地を鮮やかに彩る花の群れ。 ひと知れず、岩場の隅に必死で咲く丈低い可憐な花、花、花。 つい、魅せられてしまう、その強さに、健気さに・・。小さくも鮮やかな色彩、あたかも鏡に映し出されたパラダイスかと・・。創造主が人類に授けた贈り物かもしれない。 厳しい条件のもとで根付いた高山植物は数千種にもなるという。まるで日ごとに変化する地面のカーペットにも見える。冬が終わりを告げ始めると、雪の間から「私はココよ!」ささやいているように顔を出す。 この蔭に、ドラマチックに展開している生存闘争があると聞く、さまざまな形と輝くような色彩,生き残り繁茂するために費やす力、大きな自然のアイデアであろうか。 例のない完璧さで人を夢中にさせる。その旺盛な生存力に人は、限りない共感と感動と元気をもらうのである。                                  秀峰の表情    山の気候は気まぐれ、朝は雨模様でもたちどころにガスが動き、眼前に著名な山が顔を出す。   というと一点俄に掻き曇り、雷の音が遠くに聞えたかと思うと強い雨が降り出す。 今回も、ウンターロートホルン(3103m)の頂上からフリューアルプ(2616m)まで、エーデルワイスを探して歩いているときに、雷と雨に襲われた。山小屋まではまだ30分余。幸い無事に過ぎたが、山歩きに雷は最注意事項のようだ。                  アイガーの朝焼け 気流と太陽に刻々と彩られる名峰の雄姿、眺める者を酔わせる。何日、滞在しても仰ぎたいという気持ちがわかる。幸いなことに今回の私たちメンバーはは目的の山々とそれぞれの場所でタイミング良く出会えた。特に、リッフエルゼーで湖に映る逆さマッターホルンを見られたことだ。風、光り、気流との微妙な条件が重なってのことらしい。神々しい!瞬間を共有できて歓声!リーダーの笑顔が輝いていた。                   逆さマッターホルン                    マッターホルン                    ブライトホルン                   フリューアルプ眺望                  フリューアルプ山小屋                    ベッターホルン